アトリエシムラのストール 2019
アトリエシムラのストールには同じものは一枚もありません。
発想の源、素材となる植物、作り手の想いなど「いま、この時」を手で染め、手で織り、わずかな枚数だけを作っています。
2019年の新作は、稀少な藍の糸など工房で大切にしてきた色糸から発想し、季節の中にあらわれる一瞬一瞬を表現しました。
日々の装いに合わせてどうぞ楽しみながらまとってください。
花桃
藍というとこっくりとした濃い色味を想像しますが、この『花桃』の淡い青も、じつは藍。約2カ月がかりの藍染めのうち、甕の中の「藍さん」が落ち着いた時に出てきた色で、わずかしか染めることができませんでした。工房に大切に保管してきたこの稀少な糸をいかしたストールです。
表現したのは冬から春に変わりゆく瞬間です。一年間の季節の移ろいを区分した「二十四節気・七十二候」という日本の暦。その中に見つけた、眠りの冬を越え、桃の蕾(つぼみ)がまるでほほ笑むように開き始める頃を表す「桃始笑(ももはじめてわらふ)」という言葉にも触発されました。春が来る!という高揚感を肌から感じていただけると思います。
気持ちが晴れやかになる大胆な格子柄とにぎやかな色合わせ。巻くというより、まとうという言葉の似合う一枚です。寒色系の藍と、暖色系の茜を織り合わせることで生まれた新鮮な「織色」もこのストールの特徴。その交わりを柔らかくなじませているのが、桑と烏野豌豆(からすのえんどう)のベージュです。限られた藍に合わせて、20枚のみを作りました。
夏雲
これまでのアトリエシムラのストールの中でも特に爽やかな一枚。透明感のある色合わせが凛とした存在感を醸します。首元に清々しさが加わり、心までクリアにしてくれるようなストールです。稀少な藍の糸を使用しているため、11枚のみが出来ました。
日本の暦「七十二候」にある「半夏生(はんげしょうず)」という言葉は7月初旬を指し、田植えを終える目安として農事の節目ともされてきたそうです。まさに京都でも稲田に生命力がきらきらと充ちて、夏の到来を感じる頃。その風景にインスピレーションを得て、すっきりと晴れわたる空を表現したことから『夏雲』という名前を付けました。
臭木の苗木から表れた初々しい色と、白糸とを組み合わせ、眩しい太陽の光や、風に引っかかれたような雲の流れなど、刻々と変化する夏ならではの空の表情を表しました。藍という色には「甕覗き(かめのぞき)」という特別な色があります。藍が命の尽きる直前、稀に見せてくれる澄みきった色で、その由来は水を張った甕に映りこんだ空の色だという説も。私たちにとってのこの憧れの色も投影しました。
色合わせストール
夏雲(なつぐも)
藍×刈安×臭木×葛
手織り
約590×2000mm
(両サイドのフリンジ70mmを含む)
価格42,900円(税込)
穀雨
緑という色は植物から直接染めることができません。『穀雨』の緑は、刈安で染めた黄色の糸に、藍を染め重ねることで表れた色。このストールには、そんな私たちが魅了されてやまない植物の色の不思議さと豊かさが詰まっています。グレーは梅の枝で染めました。そのグレーを経糸(たていと)とし、緑の緯糸(よこいと)を織り込んだ時に「織色」として藍の色が表れてきたのも面白いところです。
グレーの中でも濃い部分は百日紅(さるすべり)で染めています。グレーの特徴は「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」と表現されるほど豊かな色の幅。このストールの中にも何層ものグレーがあり、その奥行きを楽しんでいただくことができます。シックに演出したり、軽やかに見せたり、巻き方によって遊ぶことのできる一枚です。
『穀雨』は日本の暦「二十四節気」の言葉。大地に降り注ぐ雨を意味し、豊作を願う人の祈りが込められているといいます。田んぼの稲がスクスク育ち始める頃、辺りには土の匂いが充満します。この時期に感じる大地の底から湧きあがるエネルギー、そのエネルギーが穀物を通して人間のからだに入っていく様子、その全てを繋ぐ恵みの雨を映したストールです。
玄鳥
春の草である野人参。工房の傍にある嵯峨釈迦堂の周りに茂っていた青々としたその葉から、力強い黄色が表れた時には驚きました。この幸福感に溢れた色を、ぜひストールに使いたいと思いました。合わせたのは樫(かし)のグレー。まっすぐに澄んだ、他の色を際立たせてくれる名脇役です。
日本の暦「七十二候」の「玄鳥至(つばめきたる)」は、まさしく冬の間を暖かなところで過ごしていたツバメたちが戻ってくる頃。空は澄んで、爽やかな風が吹く季節です。親鳥たちが軒先に作った巣の中で、雛たちが黄色いくちばしを一生懸命に開けてエサをねだっているのを見ると、大切に見守っていきたい、という気持ちになります。このストールはまさにこの光景を切り取ったものです。『玄鳥』はツバメの異名です。
都会的で透明感のあるグレーの中を、リズム良く走り抜けるような黄色。幅の細いストライプはカジュアルになりすぎず、上品にまとっていただけます。シンプルでモダンな色合いはどの季節にも馴染み、スポーティーな装いにも似合います。
使うほどに肌に馴染む心地よさ。
身にまとい、風をはらむと。
豊かな表情が生まれます。
<糸の魔術師>と呼ばれる、大正紡績の近藤さんという方がいらっしゃいます。ストールには、近藤さんとアトリエシムラとで開発したオリジナルの糸を使用しています。大正紡績の契約農家のもとでオーガニック栽培された最高級の綿「アルティメイトピマ」を35%、絹65%を混紡し、「85番手の双糸加工」という細糸に。これを一枚一枚、手織りすることで、アトリエシムラの「色」を最大限に活かしつつ、機能性にも優れたストールが実現しました。滑らかさがありながらさらりとした感触を保った、理想的な心地よさ。肌馴染みの良さは、気持ちまで軽やかに。空気に溶け込む爽やかな糸は、見た目にも柔らかく軽快な印象をつくります。
経糸と緯糸が交差して。
あらわれる「織色」にも。
繊細な美しさが宿ります。
アトリエシムラでは、すべての糸を手で染めていきます。植物由来の色は、とても柔らかく繊細です。植物の状態や気候によっても微妙な変化があります。植物の命と向き合いながら丁寧に染めた糸を経糸・緯糸として織り重ねて行くと「織色」が生まれ、そこにもまた思ってもみない豊かな色が表れることがあります。これこそアトリエシムラの色合わせストールならではの魅力です。これらの色は、自然光や照明によって表情が変わります。また、時間が経つにつれてニュアンスが変わっていくのも植物染料ならでは。永く身につけ、時間を重ねていくことで味わえる変化をどうぞお楽しみください。
冬はあたたかく
夏は日焼け対策、冷房対策にも。
オールシーズンを一緒に。
素材、染料、工程のすべてにおいて自然であることを貫いているアトリエシムラのストールは、肌に直接触れるものにはできるだけこだわりたいという方の通年アイテムとして適しています。また、一年中使える機能性、性別を問わないデザインから大切な方へのプレゼントとして選ばれる方もいらっしゃいます。
アトリエシムラのマークが表しているのは「葉脈」です。私たちが工房で作りだすものが、自然からのいただきものでできていること、また自然と人間との繋がりを意味しています。常に自然への感謝と畏敬の想いに立ちながら、一枚一枚気持ちを込めて織りあげたストールを、京都・嵯峨の工房からお客さまのもとに大切にお届けします。
アトリエシムラのストール
源流である染織家 志村ふくみ・志村洋子の技術や美意識を継承しながら、色の探求や色合わせをとおしてさまざまな「初めて」を試みています。京都・嵯峨の工房に集い、私たちが日々体験している植物と向き合う楽しさや仲間とのものづくりの喜び、感動の瞬間を、一枚のストールから感じていただけたら幸いです。